中学2年生の田辺くん(仮名)は小学1年生から通っていて、教室長はロイヤルカスタマーの田辺くんを息子のようにかわいがっていました。僕は勤務初日に田辺くんと出会ったのですが、その時教室長が「田辺くんはこの教室の中で一番いい子。授業はしっかり聞くし、予習も復習もしっかりやってくる優秀な生徒です。そうだ田辺くん、この先生で何かあったらすぐ私に言って下さいね」と言っていたのを今でも覚えています。後から知ったことですが、田辺くんの家は自営業でかなり儲けているということ。それも教室長のお気に入りの一つだったようです。
教室長は授業に関係のない無駄話をしている生徒には「ほらほら、勉強に集中!」と注意しますが、田辺くんの時は違いました。田辺くんは家でしっかりと勉強しており、話が終わると気持ちを切り替え勉強に集中して取り組むため、教室長が田辺くんの話を止めるという事はほとんどありませんでした。
「田辺くんの話は無駄話ではなく、田辺くんに必要な気分転換なので、最後まで話を聞くように」
教室長の言いつけどおり、僕は色々な話を聞きました。
少年野球をやっていたけど小6の夏に肩を壊して野球を辞めたこと。
中学では陸上部に入り、毎朝5キロ走っていること。
大きい犬に追いかけられてから、犬がニガテなこと。
妹がいて、妹はピアノとバレエと習字を習っていること。
妹も塾を習っていたけど、ピアノとバレエの方が楽しいからと辞めたこと。
大人になったら父親の跡を継ぐこと。
毎年冬休みは海外旅行に行くこと。
・・その他にも色々聞きましたが、僕が印象に残っているのはリフォームの話です。
田辺くんは伊丹郷町と呼ばれる地域に住んでおり、自宅は田辺くんのお父さんが小学校の時に建てられたものだそうです。(伊丹郷町についてはこちらのサイトを参考にして下さい→伊丹郷町LIFE)
一緒に住んでいたおじいさんは5年前に、おばあさんは昨年他界。介護用にリフォームはしていたものの、祖父母の他界をきっかけに、家を現代風にリフォームすることになりました。ところが、お父さんは伊丹郷町の街並みに合う日本家屋を希望。お母さんはイングリッシュガーデンが似合う洋館に憧れがあり、妹も「洋風がいい!!」と家族間で意見が対立していると田辺くんは言っていました。結局、景観条例で洋館は建てられないことが判明し、伊丹郷町の街並みに合わせた家に決まりましたが、田辺くんは「日中は学校。夜は塾。休日も塾か部活でほとんど家にいないから、洋風でも和風でもどっちでもいい。雨風しのげて寝れたら十分(笑)」と、中2ながら達観していたのが印象的でした。
その後田辺くんは某進学高校に進学。(もちろん教室に〇〇高校1名合格!と貼りました)田辺くんは小学1年生から中学3年生まで通ったこの塾を去りました。